
アイ・アール債権回収から債権譲渡通知書が届いたら
こんな相談がありました
今日は、【アイ・アール債権回収株式会社】から<債権譲渡通知書>および<債権譲受通知書(貸金業法第24条2項に係る第17条書面)>が届いたとご相談がありました。
通知書には、
「譲渡人は、xxxx様に対して有する後記債権を、これに付従・随伴する一切の権利とともに、2026年5月xx日付で譲受人に譲渡しました。」
と記載されており、元々【アコム株式会社】が保有していた債権が、【アイ・アール債権回収株式会社】へ譲渡されたことが分かります。
また、同封されていた債権譲受通知書には、
〇債権譲渡日:2026年5月xx日
〇譲り受けた債権額:37万円
〇最終貸付年月日:2007年xx月xx日
〇貸付けの金額:10000円(最終貸付契約時元本残高:10万円)
〇最終貸付契約時における次回の返済期日:2007年xx月xx日
と記載されていました。
相談者によると、アコムへの返済はかなり以前に止まっており、少なくともここ10年以上は連絡も取っていないとのことでした。
より良い解決方法を考えましょう
まず初めに知っておいていただきたいのが、債権譲渡が行われても時効期間はリセットされないということです。
今回のケースでは、アコムからアイ・アール債権回収へ債権が譲渡されていますが、債権譲渡とは債権者が変わるだけであり、時効の進行そのものには影響を与えません。
例えば、アコム時代に既に時効期間が経過していたのであれば、その状態はアイ・アール債権回収に引き継がれますし、逆に時効期間が完成していないのであれば、その途中経過もそのまま引き継がれます。
そのため、「債権譲渡通知が届いたから時効がリセットされたのではないか」と心配される方もいらっしゃいますが、そのようなことはありません。
また、アイ・アール債権回収はアコムの子会社であり、アコムが長期間回収できなかった債権について請求を行うことが少なくありません。
なお、債権回収会社とは、ざっくり言いますと以下のような会社を指します。
・法務大臣の許可を受けた債権回収専門会社(サービサー)
・金融機関等から債権の譲渡や回収委託を受ける会社
・古くなった延滞債権を取り扱うことが多い会社
そのため、消滅時効の要件を満たしている債権が含まれていることも珍しくありません。
重要なポイント
この<消滅時効の援用>については、
・5年以上支払をしていない
・5年以上相手方と連絡を取っていない
・過去に裁判や強制執行などによって時効が更新されていない
という点が非常に重要になります。
今回の通知書で特に注目すべきなのは、
「最終貸付契約時における次回の返済期日 2007年xx月xx日」
という記載です。
もちろん、最終貸付後も返済を継続していた可能性があるため、この日付だけで2007年以降一切支払っていないと断定することはできません。
しかし、少なくとも契約関係が2007年当時のものであることは明らかであり、現在が2026年であることを考えると、かなり古い取引であることが窺えます。
さらに、通知書には、
・残元金 8万円
・譲受債権額 37万円
との記載があります。
一般的な消費者金融の遅延損害金率は年20%前後ですので、仮に元金が8万円で推移していた場合、1年間で発生する損害金は約1万6000円程度となります。
差額である約29万円を単純計算すると、29万円÷1万6000円≒18年という計算になります。
もちろん実際には元本残高の変動や利息計算方法などがあるため、この計算だけで経過年数を断定することはできません。
とは言え、少なくとも短期間の延滞では説明しにくい金額であり、長期間支払が行われていない可能性を示す一つの参考資料にはなります。
もっとも、損害金から逆算する方法はあくまで目安であり、実際に時効が成立するか否かは取引履歴や過去の法的手続きの有無等を確認して判断する必要があります。
また、注意しなければならないのは放置してしまうことです。
アコムは比較的裁判を控える傾向がありますが、アイ・アール債権回収は債権回収会社である以上、回収のために訴訟や支払督促を利用することがあります。
そのまま放置していると、
・裁判所から訴状が届く
・判決を取得される
・給与の差押え
・預金口座の差押え
といった手続に発展する可能性があります。
時効の可能性がある案件であっても、放置してよいという意味ではありませんので注意が必要です。
さらに、信用情報の観点からも早めの対応が重要です。
一般的に、アコムからアイ・アール債権回収へ債権譲渡が行われた場合、信用情報上では長期延滞の状態が一定の期間を通じて固定されることになります。
そのため、時効の要件を満たしている可能性が高いのであれば、アイ・アール債権回収へ譲渡された後ではなく、アコムから請求を受けている段階で時効援用を行うことが望ましいといえます。
これはアコムに限らず、他の消費者金融やクレジットカード会社についても同様です。
古い借入について請求が続いている場合には、債権譲渡される前の段階で専門家へ相談することをおすすめします。
解決
当事務所が代理人としてアイ・アール債権回収へ連絡し、取引履歴等を確認したところ、最後の返済から既に5年以上が経過しており、その間に裁判や強制執行等の時効を更新させる措置も行われていませんでした。
そこで、内容証明郵便により消滅時効を援用した結果、アイ・アール債権回収も時効の成立を認め、その後の請求や督促は行われなくなりました。
今回のように、アコムからアイ・アール債権回収へ債権譲渡された案件であっても、債権譲渡そのものが時効に影響するわけではありません。
長期延滞中の債務の件で通知が届いた場合には、まずは時効の可能性を確認し、適切な対応を取ることが重要です。
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事務所概要
アルスタ司法書士事務所
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オフィシャル:https://alsta.jp/
お問い合わせ
執筆者:司法書士 大塚勇輝
アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属
1985年生まれ。父親の転勤により沖縄で生を受けるも、育ちはほぼ大阪一筋40年。 何故か小さい頃から周辺に法律問題が多く、公務員である父親への反発もあってか、大学卒業後もサラリーマンの道を選ばず司法の世界へ。 2010年司法書士試験合格。自称「個人の顧問法律専門家」。登記・成年後見業務に限らず、相続問題や借金問題など相談者の様々なニーズに応えることに注力している。
