
中央債権回収から債権譲渡通知書が届いたら
こんな相談がありました
今日は、【中央債権回収株式会社】から<債権譲渡通知書>が届いたというご相談がありました。
相談者からの問い合わせは次のようなものでした。
「メールにて失礼いたします。中央債権回収株式会社より債権譲渡通知書が届きました。どうやら5年前に亡くなった母に三菱UFJニコス株式会社からの借入れがあったようです。母の通帳の履歴を確認しましたが、借入れ、返済の記載が見つからず、どうすれば良いか分からなかったためネットで検索して連絡しました。」
突然、亡くなったご家族宛の借金について通知が届けば、不安になるのも当然です。
特に今回のようなケースでは、
・そもそも借入れがあったことを知らない
・いつ借りたのか分からない
・どこまで返済していたのか分からない
・相続人として支払義務があるのか分からない
という問題が生じます。
また、請求者が三菱UFJニコスではなく中央債権回収になっていることから、「なぜ知らない会社から請求が来るのか」と驚かれる方も少なくありません。
中央債権回収は法務大臣の許可を受けた債権回収会社(サービサー)であり、金融機関や信販会社から債権の譲渡や回収委託を受けて債権回収業務を行っている正規の会社のため、詐欺の類ではありません。
今回のケースでは、三菱UFJニコスが保有していた債権が中央債権回収へ譲渡されたことにより、中央債権回収から通知が届いたものと考えられます。
より良い解決方法を考えましょう
このような相続債務の案件では、まず確認しなければならないことが3点あります。
1点目は、「本当に相続人として支払義務を負っているのか」という点です。
2点目は、「相続放棄の期間が経過しているか否か」という点です。
3点目は、「仮に支払義務があるとしても、既に時効になっていないか」という点です。
相続が発生すると、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続の対象になります。したがって、相続人の地位にある方は当然に借金の返済義務を負うことになります。
プラスの財産がない相続なのであれば、相続発生から3ヶ月以内に管轄裁判所に対して「相続放棄」の申述をしておけば、相続人としてカウントされません。そうすると、後から出てきたプラスの財産を相続することは出来ませんが、一方で借金返済の請求を受けることもありません。
しかしながら、今回のケースのような相談では、既に相続放棄の申述期間が経過してしまっていることも少なくありません。(借金返済の請求を受けて、初めて相続発生の事実を知った場合はこの限りではありません。)
もし、相続放棄の期間を過ぎてしまっている場合や、プラスの財産を相続してしまっている場合については、「消滅時効の援用」により解決を図ることが出来る可能性があります。
時効の要件は以下の3つです。
・5年以上支払をしていない
・5年以上相手方と連絡を取っていない
・過去に裁判や強制執行などによって時効が更新されていない
なお、相続が発生したからといって、時効期間はリセットされません。
これは非常に重要なポイントです。
例えば、亡くなったお母様が最後に返済したのが15年前だった場合、その後に死亡したとしても、死亡によって時効期間が最初から数え直しになることはありません。
相続は時効の更新事由ではないため、時効期間はそのまま進行し続けます。
したがって、古い借金であれば、相続人が時効援用を行うことで解決できる可能性が十分にあると言えます。
重要なポイント
さて、相続債務の請求については、債権者が相続の事実を把握しているかどうかで対応が変わります。
①債権者が相続の事実を知らない場合
この場合、債権者は契約者本人が亡くなったことを知らないため、亡くなった方に対し請求をします。
そのため、
「契約者は既に死亡していること」
「自分が相続人であること」
を戸籍等によって示しながら対応していく必要があります。
また、借金などの金銭債務は法律上『可分債務』とされています。
例えば、相続人が子ども二人であれば、原則として各自が2分の1ずつ債務を承継します。
この場合、一人だけが時効援用を行ったとしても、その人の持分についてしか時効の効果は発生しません。つまり、兄が時効援用しても妹が何も対応しなければ、妹の持分については請求が残る可能性があります。
そのため、時効援用によって完全解決を目指すのであれば、相続人全員がそれぞれ時効援用を行うことが重要になります。
②債権者が相続の事実を把握している場合
一方、既に戸籍調査などにより債権者が相続の事実を把握している場合は、相続人宛に直接請求が行われます。この場合は改めて戸籍を提出する必要はありません。
注意すべきは、借金などの金銭債務は法定相続分に応じて分割承継されるにも関わらず、債権者は相続人の一人に対して全部の請求を行うことができます。
しかし、請求された側は自分の法定相続分を超えて支払う義務はありません。
仮にどなかた1人の相続人が相続分を超えて支払ってしまった場合には、本来他の相続人が負担すべき部分について求償権を取得し、他の相続人へ請求することができます。
また、
「遺産分割協議で長男が借金を引き継ぐことになった」
「遺言で特定の相続人が債務を承継すると書かれている」
といったケースがままありますが、こうした取り決めは相続人同士の内部的な約束に過ぎません。つまり、「遺産分割協議で決めたから私は支払わない」という主張をもって債権者に対抗することはできません。
この点も誤解が非常に多い部分ですので注意が必要です。
そして、何より重要なのは時効の確認です。
三菱UFJニコスから中央債権回収へ譲渡される債権の中には、長期間回収されていない古い債権が含まれていることが少なくありません。
最後の支払から5年以上経過し、その間に裁判や強制執行などが行われていなければ、時効援用によって解決できる可能性があります。
反対に、放置してしまうと、中央債権回収から訴訟提起や支払督促などの法的手続が行われる可能性もあります。
判決が確定すれば給与や預金口座の差押えに発展することもありますので、「古い借金だから放っておけば大丈夫」と考えるのは危険です。
解決
当事務所が代理人として中央債権回収へ連絡し、取引履歴や法的手続の有無を確認したところ、最後の返済から既に長期間が経過しており、その間に時効を更新させるような裁判等も行われていないことが判明しました。
また、相続人全員の状況を確認したうえで、各相続人から内容証明郵便により消滅時効を援用手続しました。
その結果、本件については消滅時効が成立し、中央債権回収からの請求は終了となりました。
亡くなったご家族の借金について通知が届いた場合でも、慌てて支払う必要はありません。
相続の問題と時効の問題は別々に検討する必要があります。
特に古い借金については、相続放棄や相続人が適切に時効援用を行うことで解決できるケースも少なくありませんので、まずは専門家へ相談し、取引履歴や裁判履歴を確認することをおすすめします。
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事務所概要
アルスタ司法書士事務所
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お問い合わせ
執筆者:司法書士 野間知洋
アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属
前職は某中小消費者金融に勤務。債務整理に関しては債務者側・債権者側双方で通算20年以上の経験を有する。
現在は権利擁護(成年後見等)に注力。
☆アルスタ司法書士事務所は、創業10年以上、借金の消滅時効援用や債務整理に関する相談実績が30,000件以上ありますのでお気軽にお問い合わせください。
