
アペンタクル株式会社から訴状が届いたら
こんな相談がありました/アペンタクル
近畿圏にお住まいの60代女性から、【宇都宮簡易裁判所】から<訴状と口頭弁論期日呼出状>が届いたけれど、遠方の裁判所なのでどうしたら良いかと相談をいただきました。
原告(訴えた側)の会社をお伺いしたところ、【アペンタクル株式会社】ということでした。
商号変更前の【株式会社ワイド】時代に付き合いはあったもの、10年以上前に完済したはずなので、これまで届いていた書面などは、何かの間違いだろうといずれも無視をしていたところ、裁判所から書類が届いたことから、流石に放っておくわけにはいかないと思い、急ぎ相談に来られたようです。
より良い解決方法を考えましょう
どのような請求を受けているかについては、訴状の記載のうち請求の趣旨及び請求の原因という部分を見る必要があります。
請求の趣旨には裁判所に判決を求める結論の部分が記載され、請求の原因には結論に結び付く法律関係や事実(経過)が記載されています。
請求の趣旨
1、被告は原告に対し、下記の金員を支払え
・金39万円(残元金)
・金240万円(利息・損害金)
・上記残元金に対する令和7年〇月〇日から支払済に至る迄、年26.280%の割合による損害金
2、 訴訟費用は被告の負担とする との判決及び仮執行宣言を求める。
以上から、今回アペンタクルが、残元金39万円と、既に発生している利息・損害金240万円、更に、令和7年〇月〇日から支払済(完済)するまで、年26.280%の損害金を付けて返済してくれ、という請求をしてきていることが分かります。
裁判を起こした段階で既に300万円近い金額に膨れ上がっているということですから、なかなか二つ返事で払えるような金額ではありません。
また、訴状に明確には記載されているわけではありませんが、もし、裁判所がこの請求の趣旨記載のとおりの判決を出した場合、支払いは一括で行わなければなりません。(総額に満たない支払いをしたとしても、残りの部分について、強制執行(差押え)の対象となる恐れがあります。)
加えて、このアペンタクルという会社は、基本的に裁判上でも裁判外でも分割払いの和解に応じることは、ほとんどありません。これは、アペンタクルがそもそも今回のような裁判を起こし、判決に基づいた強制執行を予定しているため、と考えられます。したがって、対アペンタクルに特化して考えますと、アペンタクルから請求を受けている場合は、一括して払うか、もしくは払わないかの選択肢しかないということになります。
請求の原因
1、原告と被告(訴えられた側)は平成12年7月〇日、金銭消費貸借包括契約を締結した。
2、返済期日及び返済方法
ⅰ 毎月16日限りとし、但し約定返済期日が原告窓口休業日に当たる場合は翌営業日とし、借入合計額に対する最低返済額以上を原告に持参又は送金して支払。
ⅱ 利息 年利29.200%
ⅲ 遅延損害金 年利29.200%
ⅳ 特約 利息、損害金の計算は年365日の日割り計算とする。
ⅴ 期限の利益の喪失 分割金の支払を一回でも怠った場合は期限の利益を失い、残元金に利息・損害金を合わせて一時に支払う。
3、貸付及び返済の内訳は、別紙計算書のとおり
(但し、利率は利息制限法所定の利率で計算し直した。)
4、被告は平成13年7月16日の支払を怠り、同日期限の利益を失った。
よって、原告は被告に対し、利息制限法所定の利率に引きなおした前記請求の趣旨記載の金員の支払を求める
さて、次に請求の原因ですが、先ほど述べたとおり、ここには法律関係や裁判に至る事実(経過)が記載されています。具体的には、平成12年7月にアペンタクル(旧ワイド)と契約をした後、借入・返済を行うようになり、平成13年7月16日の支払を怠ったため、期限の利益を喪失したと記載があります。
なお、期限の利益とは、支払いの期日になるまでは支払いをしなくて良いという借りた側の権利を指します。アペンタクルとの契約によれば、毎月16日までに返済をすれば良いということになっていたようですが、平成13年7月16日に予定されていた支払いをしなかったため、期限の利益を喪失し、借入額を全額一括して返済しなければならなくなったということが分かります。
ただ、その後も支払がなく、今回のように過去に裁判を起こされたことがなく、相手方と電話や対面で直接のやり取りをしたことがないようであれば、<消滅時効を援用>することで、300万円もの支払いをせずとも解決を図ることができることになります。
重要なポイント
消滅時効とは、過去10年内に裁判等がなく、且つ、5年以上支払もなく、相手方と直接の連絡を取っていない場合に、その権利義務を消滅させる法律効果を指します。
【 消滅時効 】
① 5年以上支払がない
② 過去に裁判(訴訟・支払督促)を起こされていない
③ 5年以内に相手方と直接、電話などで話をしていない
先ず、消滅時効の計算はどこからスタートするのかですが、これは必ずしても最終の支払日というわけではなく、最終の支払日または、本来支払をすべき日の翌日(期限の利益を喪失した日)のいずれか遅い方であるということに注意しなければなりません。先ほど説明したとおり、今回の相談における期限の利益の喪失日は平成13年7月17日でした。
最終支払日を確認するにあたっては、請求の原因3に<貸付及び返済の内訳は、別紙計算書のとおり>と記載があるので、この「別紙計算書」を確認したところ、最後の返済は平成13年10月16日となっていました。
以上から、相談者は最終の支払日または、本来支払をすべき日の翌日(期限の利益を喪失した日)のいずれか遅い方である平成13年10月16日から数えて5年以上返済をしていないことが訴状からも明らかであり、また、今回のように過去に裁判所から書類が届いたこともなく、相手方と直接連絡を取ったような事実もないという申告だったので、今回の請求は、消滅時効の要件を満たしている可能性が非常に高いと言うことができます。
なお、届いた訴状に対する反論は、裁判の期日の1週間前までに“答弁書”として提出する必要があります。
仮に、本当に消滅時効の要件を満たしていたとしても、こちらから積極的に主張しなければ、裁判所や原告が勝手に時効として処理してくれるようなことはありません。
万が一、対応が遅れ、請求の趣旨に記載された内容の判決が確定しまってからでは、後から消滅時効を援用することはできません。
更に、一度裁判が確定してしまうと、時効はリセットされてしまい、その後少なくとも10年間は支払義務を新たに負うこととなり、同時に、給料や銀行口座の差押えのリスクを抱えることになってしまいます。
解決
当事務所が代理人として、裁判所に対して期限内に答弁書を提出し、その中で消滅時効を援用しました。今回のケースではやはり、アペンタクルは時効をリセットさせるだけの措置を講じていなかったため、裁判期日に出頭することなく、今回裁判は取下げられ、無事解決に至りました。
【最短60秒!無料診断!】時効援用シミュレーター
≫≫≫時効援用シミュレーターはこちらから
[最短60秒]3つの質問に答えると、あなたが時効援用できるか診断できます。
事務所概要
アルスタ司法書士事務所
お電話 0120-697-096
オフィシャル:https://alsta.jp/