
グリーンアイランドから訴訟を起こされたら
こんな相談がありました
今回は、【株式会社グリーンアイランド】から訴状が届いたというご相談をいただきました。
グリーンアイランドが訴訟を提起する場合、自社の本店所在地を管轄する静岡簡易裁判所に申立てをしてきます。
この他にも【株式会社クレディア】が訴訟を提起する場合も、静岡簡易裁判所に申立てを行いますので、郵便の不在票の記載された差出人が静岡簡易裁判所である場合は、この辺りの債権者ではないかと目星をつけることができます。
さて、訴状のうち、請求の趣旨と呼ばれる箇所には次のような請求内容が記載されていました。
この部分が原告(グリーンアイランド)が請求している具体的内容で、請求が認められ判決が出た場合、この内容に従って強制執行(差押等)が可能になります。
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金35万円及び内金17万円に対する平成12年x月x日から支払済みまで年26.28%の割合に
よる金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
グリーンアイランドという名前に聞き覚えがないかもしれませんが、事件名として「譲受債権請求事件」と記載されていることから、過去に他社で契約した古い貸付契約に基づく未払い金につき、グリーンアイランドが譲渡を受け、請求しているものであることが分かります。
■ 訴状に記載された請求に至る経緯・経過、根拠について
訴状のうち請求の原因と呼ばれる箇所には請求に至る経緯・経過、根拠が記載されます。
第2 請求の原因
1 訴外株式会社ユニマット(以下、「ユニマット」という。)は
被告との間で以下の通りの金銭消費貸借を締結した。
(1)契約日 現契約日 平成9年x月x日
当初契約日 平成8年x月x日
(2)貸付額 200000円
(3)約定返済日 10日
(4)利息 年34.310パーセントの割合
(5)遅延損害金 年34.310パーセントの割合
(6)弁済方法及び返済期間 2回目以降の支払金額19930円、平成9年x月x日より平成10年x月x日まで12回、
持参又は送金して支払う
(7)期限の利益の喪失 上記(6)に基づく返済を怠った時、期限の利益を失う
2 ユニマットは、被告に対し、前項の約定に基づき、別紙「利息制限法に基づく法定金利計算書」(以下、「別紙算
書」という。)のとおり、貸し付けた。
3 被告は、別紙計算書のとおり支払いをしていたが、平成9年9月10日の支払いを怠ったため、同日の経過を以て期限の利益を喪失した。
4 ユニマットは平成9年10月1日、訴外株式会社ユニマットライフ(以下「ユニマットライフ」という。)に商号を変更した。
5 ユニマットライフは平成10年9月30日、訴外株式会社国際ファクタリングサービス(以下、「IFS」という。)に債権を譲渡した。
6 IFSは平成12年3月31日、訴外株式会社グローバルファクタリング(以下、「GF」という。)に債権を譲渡した。
7 GFは平成16年10月29日、訴外有限会社エイムメイト(以下、「エイムメイト」という。)に債権を譲渡した。
8 エイムメイトは平成16年11月15日、訴外株式会社オーシャンソリューションズ(以下、「オーシャンS」という。)に債権を譲渡した。
9 オーシャンSは平成17年11月25日、訴外株式会社オーシャンセブン(以下、「オーシャン7」という。)に債権を譲渡した。
10 オーシャン7は平成24年11月1日、原告に債権を譲渡した。
よって、原告は、被告に対し、請求の趣旨記載の金員の支払いを求める。
グリーンアイランドによれば、当初の契約は平成8年にまで遡ることのようです。
時系列を整理し、内容を要約しますと、
1.平成8年(または9年)当時、株式会社ユニマットと金銭消費貸借契約を締結。
貸付額は20万円、利率・損害金率は年34.310%、返済は毎月1万9930円、全12回で行う内容。
2.平成9年9月10日の支払いを怠り、同日の経過をもって期限の利益を喪失。
3,その後、債権者は次のように変わっていきます。
ユニマット → ユニマットライフに商号変更(平成9年10月1日)
ユニマットライフ → 国際ファクタリングサービスへ譲渡(平成10年9月30日)
国際ファクタリングサービス → グローバルファクタリングへ譲渡(平成12年3月31日)
グローバルファクタリング → エイムメイトへ譲渡(平成16年10月29日)
エイムメイト → オーシャンソリューションズへ譲渡(平成16年11月15日)
オーシャンソリューションズ → オーシャンセブンへ譲渡(平成17年11月25日)
オーシャンセブン → 株式会社グリーンアイランドへ譲渡(平成24年11月1日)
このように、契約当時から20年以上を経て、未払い債権は複数回にわたって譲渡されているため、急にグリーンアイランドなる会社から裁判を起こされてもピンと来ない方が多いのも無理はありません。
より良い解決方法を考えましょう
請求の原因の記載によれば、平成9年9月10日の支払いを怠ったとされています。訴状に添付されている利息制限法に基づく法定金利計算書を確認しますと、最終の支払い日は平成9年8月22日となっていることから、その次の支払予定日が平成9年9月10日であったことが分かります。
20年以上未払いの状態が続いているのであれば、消滅時効完成の可能性について検討する必要がありそうです。
■ 時効の可能性について
2020年4月以前の民法では、消費貸借契約による債権の消滅時効は5年または10年と定められていました。そして、この5年または10年の期間が過ぎているかどうかを判断するには、「期限の利益の喪失日」を確認する必要があります。
期限の利益とは、返済する側から見た時の「返済の猶予」を指しますが、この返済の猶予が続いているうちは、時効期間の計算はスタートしません。
理由としては、この「期限の利益」を請求する側から見た時に、返済が猶予されている間は請求することが出来ないためです。請求が出来ないにも関わらず、時効期間が進行するということになると不平等だということなのでしょう。
基本的には契約上の約款にしたがって期限の利益を失うか、特約がなければ、支払い期日(分割払いであれば、最終回の返済期日)の翌日から計算すると捉えておけば問題ありません。
今回のケースで言えば、請求の原因の中に、「7)期限の利益の喪失 上記(6)に基づく返済を怠った時、期限の利益を失う」という特約があったため、支払い予定日である平成9年9月10日に返済を怠った結果、同日の経過によって期限の利益が喪失し、平成9年9月11日から時効期間の計算がスタートしたということになります。
その結果、平成14年9月10日の経過を以て時効期間は満了しているということになりますが、
重要なポイント
では、なぜ時効期間が経過しているにも関わらず、グリーンアイランドは訴訟を提起してきているのでしょうか?
これは、時効は主張(援用)しなければ効力が生じないものだからです。
したがって、今回の訴訟を放置してしまうと、グリーンアイランドの請求は丸々認められてしまうため、時効が成立しているのであれば、漏れなくこれを主張しておく必要があるということです。
■裁判を放置するリスク
裁判所から届く訴状を無視すると、請求がそのまま認められることになる。
判決が確定すれば、給与や預金の差押えに発展する恐れがある。
内容に覚えがない場合や、契約が古い場合でも、必ず答弁書を期限内に提出する必要がある。
解決
上記で検討したとおり、期日に間に合うように答弁書にて消滅時効を援用したところ、期日を待たずしてグリーンアイランドは訴訟を取り下げるに至り、裁判所から取下書面が届いた後、念のため裁判外でも直接グリーンアイランドとやり取りをし、今後の請求・督促がないことを確認して業務は終了しました。
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