
AG債権回収株式会社から請求書が届いたら
こんな相談がありました/AG債権回収
今日は、【AG債権回収株式会社】から<請求書>が届いたと相談がありました。
届いた書面には、譲渡元が【アイフル株式会社】となっており、令和5年に同債権を譲り受けた旨と、請求書作成日から数えて1週間以内に利息・損害金を含めて一括して返済するよう記載がされているとのことでした。
AG債権回収とは、消費者金融業を営む、CMでもおなじみのアイフルの完全子会社であり、元々は【アストライ債権回収株式会社】という名称でしたが、令和2年に商号を変更し、現在はAG債権回収の名でサービサー業を行う債権回収会社です。
債権回収会社とは
・法務大臣の認可を得て成立した、<債権回収専門>の株式会社(通称サービサー)
・金融機関等から<委託または譲渡>を受けて債権回収を行っている
・基本的に<不良債権>と呼ばれる古くなった債権を取り扱っている
アイフルの子会社であることはAG債権回収のホームページからも明らかで、また、拠点の所在地もアイフルと同一です。したがって、AG債権回収は他の債権の取り扱いもあるようですが、アイフルへの返済が長期にわたって滞っている場合に、AG債権回収へ債権が譲渡され、その後にAG債権回収から請求を受ける、というのが最も多いパターンだと考えられます。
では、債権が譲渡され、債権回収会社から請求を受けてしまった場合は、早々に諦めて返済をしなければならないのでしょうか。
より良い解決方法を考えましょう
返済の期限が請求書作成日から数えて1週間以内ということですので、手元に請求書が届いたときには、期日まで数日しかないということは他の債権者(請求をする側)のケースでもよくあることです。加えて、期日を過ぎても返済がないときは裁判します、と記載されている場合も多いと思います。
これは、返済の期限を短くし、その後のリスクをほのめかすことで、正常な判断を鈍らせ、じっくり考える間もなく支払いをさせるというのが主な目的ですが、他の債務者(=負債を負っている方)にも同様の書面を送っている可能性が非常に高いことから、期限内に返済のなかった方全員に対して、期限経過後直ぐに、また、同時に裁判をするというのはあまり現実的ではありません。という意味では、過剰に“返済の期日”“裁判”などの言葉に反応する必要はないのかもしれません。(もちろん順番が回ってくれば、いずれ裁判を起こされることは間違いがないので、このまま放っておいて良いという話ではありません。)
ちょっと落ち着いたところで、一旦返済の期限については横に置いておき、先ずは届いている請求書の内容を確認していきましょう。
譲渡元 アイフル株式会社
譲受年月日 令和5年x月x日
ご契約者 xxxx
債権者 AG債権回収株式会社 滋賀県草津市西大路町1番1号
債権金額 【令和7年x月x日 現在残高】
<内訳> 元金残高 30万円
利息 2万円
遅延損害金 58万円
法的手続費用
その他
請求額合計 90万円
お支払い期日 令和7年x月x日
(※書類作成日から1週間後の日付が設定されています)
当初契約の明細
契約番号 xxxxxx-xxxx-xxx
当初債権者 アイフル株式会社
債権発生年月日(契約日) 2014年8月x日
発生時債権額(契約金額) 300,000
商品名証/契約種別 極度貸付(カード)/カードローン(リボルビング)
最終貸付日 2014年9月x日
最終貸付直後残高 300,000
債権の弁済期 2023年9月30日
利率 18.000%
遅延利率 20.000%
譲受年月日 2023年x月x日
今回も例外ではなく、アイフルの未払い債権をAG債権回収譲受け、2014年に最後に貸付を受けた際に残高30万円だったものが積もり積もって、90万円にまで膨れ上がっていることが分かります。
ちなみに、本来の返済期日に遅れて以降の利息を“遅延損害金”と言いますが、これは支払が遅れたペナルティとして、利息よりも高い利率が設定されることが少なくありません。
今回の請求書には、遅延利率が20%と記載されていますので、5年未払が続くと、単純に元金額の倍額(細かい計算方法はまた別の機会に触れようと思います)に膨れ上がることになり、今回の元金30万円が90万円になるには10年の未払期間が必要になる計算になります。
これに対し、債権の弁済期が2023年9月30日と記載されている点が気になりますが、債権の弁済期と記載するのであれば、本来は支払うべき最後の期日を記載するのが通常です。しかしながら、債権者によっては各々の債権者固有の記載をしてくることがあるので注意が必要です。
なお、今回のケースで言えば、アイフルからAG債権回収へ債権譲渡された日付に近しい日付であり、2023年9月30日に支払う約束や、この日に裁判が確定したなどの特別な事情がない限り、こちらには関係のない日付が記載されていると捉えて良いでしょう。
改めて相談者に状況を伺ったところ、アイフルへの返済は10年ほど滞っており、相談に至るまでアイフルともAG債権回収とも直接話をしたこともなければ、今回の件について裁判所から書類が届いたこともないとのことでした。
さて、10年以上払っていない、AG債権回収と直接話をしていない、アイフルまたはAG債権回収から裁判を起こされたことがない、これら事実から考えられる返済以外の解決方法としては、やはり消滅時効について検討せざるを得ません。
重要なポイント
“消滅時効”とは、民法第166条に規定された時効に関する法律の一種です。
【民法166条】
1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
(1)債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
(2)権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
では、5年間未払いが続けば、無条件で時効の利益(債権が消滅することで、以降請求を受けることがなくなる)を受けることができるのでしょうか。諸説ありますが、消滅時効は援用しなければ、その効果を得ることはできません。逆に言えば、債権者は時効の主張を受けるまでは時効の要件を満たしていたとしても、これを考慮する義務はないため、いつまでも請求を受け続けることになります。
なお、時効の成立を妨げる事実、行為についても同じく民法上で定められています。(かつては時効の中断と呼ばれていたものが、2020年4月以降はこれを時効の更新や時効の完成猶予と呼ぶようになりました。)
主なものとして、幾つか挙げておきましょう。
1.債務者による債務の承認
債務者が債務を承認した場合、時効は更新(リセット)されてしまいます。債務の承認とは、債務者が債権者に対して債務の存在を認めることを指し、具体的には以下のようなものがあります。
・債務の一部を支払う行為
・債務を認める書面の取り交わし
・返済猶予を求める行為、会話など
1.支払督促・裁判上の請求(訴訟)
いずれも裁判所を通じた手続きということになりますが、債権者が申立てた時点で、時効は完成が猶予され、いずれも手続きが完了(確定)した段階で時効は更新され、更新後は新たに10年間の支払義務を負うことになります。
この他にも財産開示手続きや、差押え、破産や当事者の合意によって時効の更新や完成猶予されてしまうケースがありますが、とりあえずのところは、以下のポイントだけ押さえておいてください。
【 消滅時効の要件 】
・5年以上支払をしていない
・5年以上相手方と話をしていない
・過去10年内にその借入について裁判所から書類が届いたことがない
解決
当事務所が代理人として、AG債権回収から取引履歴を取り寄せたところ、先の消滅時効の成立を妨げるような事実はなかったことから、内容証明郵便をもって消滅時効を援用しました。これにより、今後の請求・督促はなくなり、無事解決に至りました。
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