
債務名義について
こんな相談がありました
消滅時効についてのご相談の中でも、近年特に多いのが「裁判を起こされている場合でも時効になりますか?」「判決や支払督促があると、もう時効は無理なのでしょうか?」といった、いわゆる債務名義に関するご相談です。
長期間返済をしていない債務については、届いていた裁判書類をそのままにしてしまった結果、判決が確定してしまっているケースも少なくありません。
このような場合、「裁判があった=一生支払わなければならない」とお思いになる方も多いのですが、必ずしもそうとは限りません。
反対に、裁判所から書類が届いていたことはあるが、「不在のまま実際には裁判書類は受け取っていないので、時効はリセットしていない」と考える方もいらっしゃいますが、これも一概には言えません。
いずれにせよ、知らずに対応を誤ると、成立していたはずの時効の利益を自ら失ってしまう可能性があることから、最低限の知識は備えておく必要があります。
そもそも、「債務名義」とは何でしょうか。
民事執行法22条
債務名義とは、強制執行をすることができる権原をいう。
代表的な債務名義には、以下のようなものがあります。
・確定判決
・仮執行宣言付判決
・支払督促(仮執行宣言付)
・和解調書、調停調書
・公正証書(執行認諾文言付)
これらが存在すると、債権者は強制執行(差押え等)を行うことが可能となります。
(債務名義単体では足りず、これに加えて、送達証明や執行文と呼ばれるその他の書類も揃える必要があります。)
また、債務名義は裁判所関与のものがほとんどですが、これ以外にも公証役場で作成・発行する公正証書でも強制執行の手続きを執ることができます。
より良い解決方法を考えましょう
借りたものを返すのは当たり前のことです。返済のない相手に対して、債務名義を取得の上、強制執行(差押え等)が行われることは、請求する側の当然の権利とも言えます。
ただ、時間に経過とともに生活再建を図っている方が、いつまでも強制執行(差押え等)を受けるリスクを負い、請求・督促を受け続けなければならないとなると、これは余りに酷だとも言えます。
そこで、法律は(債務名義がある場合であっても、)一定期間が経過すれば、請求する側の権利を消滅させる”消滅時効”という制度を設けたわけです。
結果論ではありますが、古い未払金についての請求があった場合には、その解決策として、当事務所では”消滅時効”の援用を検討・提案しています。
重要なポイント
民法第169条
「確定判決又はこれと同一の効力を有するものによって確定した権利については、時効は、10年間行使しないときに完成する。」
ここでいう「これと同一の効力を有するもの」とは、先ほど説明した支払督促、和解調書、調停調書などの債務名義を指します。
通常、消費者金融やクレジットカード債務の消滅時効は民法166条により「5年」とされていますが、一度裁判等により権利が確定すると、時効期間は10年に延長されます。
つまり、
・裁判前の債務 → 原則5年
・判決等で確定した債務 → 10年
という整理になります。
もっとも重要なのは、「10年経てば自動的に消えるわけではない」という点です。時効は、完成しても援用しなければ効力が生じません。
また、この10年の間に、債権者が強制執行を行った場合(ここには、必ずしも強制執行の結果、未払い金を回収できなかった場合も含みます。)や、債務者が一部でも支払いや承認をした場合には、時効は更新(中断)され、再びゼロから進行し直すことになります。
時効期間の起算点に注意
債務名義の場合、時効の起算点は「判決等が確定した時」になります。
たとえば、
・判決確定日
・支払督促に対して異議申立てができなくなった日
ここから10年間、一切の時効更新事由がなければ、時効完成となります。差押え、仮差押え、承認(分割払いの合意など)等が時効更新事由に該当します。
そのため、「長年払っていない」という事実だけでは、時効かどうかを断定することはできません。
解決
当事務所では、債務名義が存在する案件についても、
・判決の種類
・確定日
・その後の執行や支払の有無
を丁寧に確認した上で、消滅時効援用が可能かどうかを検討しています。
仮に時効の要件を満たしていない場合でも、交渉や分割和解など、別の解決方法をご提案することは可能です
「判決があるからもう無理だろう」と諦める前に、「もしかしたら時効かもしれない」
その程度の気持ちで構いません。資料の確認と調査を行い、最も適切な解決策をご提案することをお約束します。
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事務所概要
アルスタ司法書士事務所
お電話 0120-697-096
オフィシャル:https://alsta.jp/
お問い合わせ
執筆者:司法書士 野間知洋
アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属
1980年生まれ。鹿児島出身、航海士を目指し高専高校に入学するも挫折。様々な職種を経験した後、縁あって金融業界に飛び込む。某街金の店長にまで昇進するも金融業界の構造ややり方に疑問を持ち、一転、司法の道を進む。 20xx年行政書士試験合格、2013年司法書士試験合格。座右の銘は、明日やろうは馬鹿野郎。自身の経験から主に借金問題及び高齢者に係るトラブル(相続、成年後見など)に注力している。「問題の解決を先延ばしにしても何も変わりません。できることは今日やりましょう!」
執筆者:司法書士 大塚勇輝
アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属
1985年生まれ。父親の転勤により沖縄で生を受けるも、育ちはほぼ大阪一筋40年。 何故か小さい頃から周辺に法律問題が多く、公務員である父親への反発もあってか、大学卒業後もサラリーマンの道を選ばず司法の世界へ。 2010年司法書士試験合格。自称「個人の顧問法律専門家」。登記・成年後見業務に限らず、相続問題や借金問題など相談者の様々なニーズに応えることに注力している。