ギルドから減額和解の提案書が届いたら

こんな相談がありました

少し前のお話になりますが、「株式会社ギルドから減額和解の提案書が届いた」というご相談がありました。

ギルドを相手に債務整理を行ったことのある弁護士・司法書士なら耳を疑うような話ですが、相談者とすれば、「昔借りた覚えはあるので、大幅な減額提案ということもあり、支払うべきか迷っている」とのことでした。

実際に届いていた書面は以下の内容です。

(※以下原文そのまま)

作成日 令和7年x月x日
商号  株式会社ギルド
本社  大阪市淀川区西中島5丁目7番11号 第8新大阪ビル2F
取扱店 ギルドコールセンター 〒320-0055 栃木県宇都宮市下戸祭2丁目3番25号
担当者 宮館 幸徳 TEL 028-643-2008

【減額和解のご提案】

前略 貴殿とお取引中の残高につきまして、平成x年x月x日支払分よりご返済が滞っております。このままではお利息が増すばかりとなり、何ら解決に至りません。そこで、当社と致しましてはこの状況を解決する為に、債務減額和解のご提案をさせて頂きます。

一括和解提案額 220,000円<ご提案期限 令和7年x月x日まで>
現在債務額 960,000円(令和7年x月x日時点の元利合計金額です)
減額金額 -740,000円(和解により上記金額を免除させて頂きます)

一括でのご返済が困難な場合は、分割返済のご相談をお受け致します。まずは当社までお電話頂き、お客様の状況を当社担当者へお伝えください。もしくは、同送のアンケート用紙に必要事項をご記入の上、ご返送頂いても結構です。なお、今回の提案は令和7年x月x日までが有効期間となり、期日以降は無効となります。ご連絡を心よりお待ちしております。

【ご返済口座】
三井住友銀行 京都支店 普通預金口座 7977532 カ)ギルド

■ご融資の契約内容
お客様名 xxxx
会員契約番号 xxxxxxxxxxxxxx
最終貸付年月日 平成9年x月x日
最終貸付時残高 190,000円
約定利息年利率 29.200%
損害金年利率 29.200%
債権譲受年月日 平成12年x月x日
債権譲受金額 110,000円

■本書作成時点での残存債務の額

約定返済日 平成11年x月x日
残存債務の額 960,000円
残存債務の内訳 前回不足金額4,000円、利息金額4,000円、損害金額842,000円、残元金110,000円

■ご請求内容
ご請求金額 960,000円
ご請求金額の内訳 前回不足金額4,000円、利息金額4,000円、損害金額842,000円、残元金110,000円
※令和7年x月x日時点の内訳です。実際のご入金日により異なります。
※ご完済される時点の合計金額がご不明の場合は、取扱店にお問合せ下さい。

より良い解決方法を考えましょう

書面の内容を確認するときは、兎にも角にも日付を最優先で確認してください。

今回の相談の場合は、最終貸付年月日が平成9年(1997年)と記載されているので、契約そのものは、25年以上前のものだということが分かります。

古い契約に係る請求については、とりあえず時効の可能性を疑うべきですが、借入と返済を繰り返しているうちは、時効の問題にはなり得ません。

請求されている債権が時効の要件を満たしているかどうかについては、新たな貸付を受けず、更に、少なくとも返済期日から5年以上未払いのままになっている必要があります。

したがって、書面の中でより注目すべきは、最終貸付日ではなく約定返済日ということになります。記載によれば、これが平成11年となっていることから、返済自体も25年以上滞っていることが窺えます。

※なお、最後の取引が返済ではなく、貸付の場合は、当該貸付に対応する返済予定日の翌日から時効期間を計算することになるので、注意が必要です。

また、今回の通知では960,000円 → 220,000円という約75%もの大幅減額が提示されています。実務上、このような減額提案が出てくるケースは、回収見込みが著しく低い債権(裁判などの事実がなく、且つ、既に時効期間が満了している)である可能性が高いものと考えられています。



重要なポイント

①ギルドは通常、減額和解をほとんどしない債権者

株式会社ギルドは、旧社名を「ハッピークレジット株式会社」と言い、「山陽信販株式会社」・「株式会社信和」を吸収合併し、その後に社名を何度も変更し「トライト株式会社」→「株式会社ヴァラモス」→「株式会社ギルド」となっている貸金業者(現在は貸金業を廃業し回収のみ行っており厳密にはみなし貸金業者)です。

・減額和解に応じない強硬な交渉スタンス
・債務名義がある場合は、財産の有無を問わず、強制執行(差押え)に積極的である
・所在不明の場合も公示送達で債務名義を取得することも多い

という特徴があります。そのため、今回のような大幅減額提案はむしろ異例といえるでしょう。
このような場合は、「なぜここまで減額するのか」という点を冷静に考える必要があります。その背景として考えられるのが消滅時効の問題です。

②期限はあくまで相手の都合

通知書には「提案期限 令和7年x月x日まで」と書かれています。
しかし、これはあくまで債権者側が設定している期限にすぎません。
法律上、期限を過ぎたからといって直ちに不利益が生じるわけではありません。
むしろ注意すべきなのは、焦って電話をしてしまうことです。
例えば次の行為は、債務承認(時効リセット)になる可能性があります。

・支払相談をする
・分割をお願いする
・少額でも支払う
・「払います」と言う

つまり、焦って連絡することで、本来主張できたはずの時効を失う可能性があるのです。

③消滅時効の要件(条文)

消滅時効の基本ルールは以下の通りです。

要件内容根拠条文
時効期間債権は原則5年民法166条1項
起算点権利を行使できる時から進行民法166条
援用当事者が主張しなければ効力が生じない民法145条
更新裁判・承認などで時効がリセット民法147条

したがって、

・最終支払から5年以上
・裁判なし
・債務承認なし

この条件が揃えば、消滅時効を援用できる可能性があるということです。

成立した時効を援用することで、本来支払うべき元金・利息・損害金は一切支払う必要がなくなり、また、これにより債権者から請求を受けることもなくなります。

反対に、時効の要件を満たしていたとしても、時効を援用しなければ、債権者は時効債権として処理する義務がないため、いつまでも請求を受け続けることになりかねません。

更に、時効期間経過後でも、裁判や訪問(債務承認)の事実があると、時効はリセットされてしまうため、「どうせ時効だから」と放っておくのは得策ではありません。

解決

今回の相談では、書面から検討したとおり、約定返済日である平成11年から25年以上も未払いの状況が続いており、この間、裁判や直接のやり取り(自宅訪問、電話連絡)の事実もなかったことから、内容証明郵便で消滅時効を援用したところ、その後の株式会社ギルドからの請求は停止し、支払義務は消滅しました。

ところで、和解提案を受けて一括で払ったならまだしも、もし、半端な金額を払ってしまったような場合は、元々の請求額である960,000円全額の支払い義務を負うことにもなり兼ねません。

法律は知らなかったでは済まされませんので、払ってしまった後で、「あれは時効だったので、返してくれ」「あの返済は間違いだ」というような主張は一切通用しません。

株式会社ギルドの債務は、今回のような減額和解の提案に限らず、1990年代〜2000年代の古い契約が多くを占めることから、既に消滅時効が成立しているケースも多く、特に、長期で未払が続いている債務について、大幅な減額を提示してきている場合は、時効の可能性を疑うべき典型例だと言えます

通知が届いた場合は、焦って連絡する前に落ち着いて、先ず初めに時効の可能性を検討なさるのが良いでしょう。

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アルスタ司法書士事務所
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    執筆者:司法書士 野間知洋
    アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属


    前職は某中小消費者金融に勤務。債務整理に関しては債務者側・債権者側双方で通算20年以上の経験を有する。 現在は権利擁護(成年後見等)に注力。

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