
トラスト弁護士法人からご訪問メモが投函されていたら
こんな相談がありました
50代男性の方から、自宅を訪問されたうえで【トラスト弁護士法人】名義の「ご訪問メモ」が投函されていた、とのご相談をいただきました。
メモには、れいわクレジット管理株式会社から業務委託を受けた弁護士法人であること、連絡が取れないため急ぎの用件があり訪問したこと、そして至急電話をするよう求める記載がされているようです。
トラスト弁護士法人は、債権回収業務の一環として、通知書の送付だけでなく、実際に自宅を訪問することがある弁護士事務所として知られています。
相談者も「裁判や差押えになるのではないか」「このまま放置するとまずいのではないか」と感じ、当事務所へ相談に来られました。
より良い解決方法を考えましょう
投函されていた「ご訪問メモ」には、次のような記載がありました。
・受任者 トラスト弁護士法人
・委託元 れいわクレジット管理株式会社
・「連絡が取れず、急ぎの用件があるため訪問した」
・「必ず電話をしてほしい」との要請
また、委託元であるれいわクレジット管理株式会社については、
「旧社名:MUニコス・クレジット株式会社」
「三菱UFJニコス株式会社から分割した会社」
であることも明記されていました。
余談ですが、れいわクレジット管理株式会社は、もともと【MUニコス・クレジット株式会社】という名称の、三菱UFJニコス株式会社の子会社であり、同社が保有していたクレジット債権の一部を会社分割により承継し、請求・回収を行ってきた会社です。
その後、株式譲渡(いわゆるオーナーチェンジ)により三菱UFJグループから離れ、社名を変更したことで、現在の【れいわクレジット管理株式会社】となりました。
したがって、詐欺や架空請求ではありませんが、「れいわクレジット管理」という名称に身に覚えがないと感じるのも無理はありません。もっとも、だからといって請求をそのまま放置してしまうと、いずれ裁判に発展し、給料や預金口座の差押えを受ける可能性も否定できません。
しかし、このようなケースこそ、慌てて電話をしてはいけない典型例です。
ご訪問メモの記載を見ると、早急に対応しなければならない印象を受けますが、訪問やメモの投函自体によって、直ちに法的手続きが進むわけでも、法律上の不利益が生じるわけでもありません。
請求内容に身に覚えがない場合や、未払いがあったとしても相当昔の話と考えられる場合には、まず消滅時効が成立している可能性がないかを、冷静に検討してみることが重要だと言えます。
■会社概要(れいわクレジット管理株式会社)
・代表者:代表取締役 越智 貴也
・本店所在地:〒106-0047 東京都港区南麻布4丁目5番48号 フォーサイト南麻布2F
・静岡事務センター所在地:〒422-8067 静岡県静岡市駿河区南町10番5号
・電話番号(代表): 03-6455-6840
・電話番号(追加利用番号):03-6821-2070、03-6277-3170
・FAX番号: 03-6455-6850
・創立: 2011年10月
・事業内容:三菱UFJニコスから会社分割により承継したクレジット債権等の回収
・関係法律事務所(顧問・委託先):弁護士法人 中村綜合法律事務所(顧問)、弁護士法人 子浩法律事務所/武藤綜合法律事務所/トラスト弁護士法人
重要なポイント
「時効」とは、一定期間、法律関係が動かなかった場合に、当事者の主張によって権利義務を確定させる、民法で定められた制度です。
時効には取得時効と消滅時効がありますが、借金の問題で問題となるのは、このうちの消滅時効です。
消滅時効の要件は、次のとおりです。
■消滅時効の要件
① 5年以上、支払いをしていない
② 過去に裁判(訴訟・支払督促)を起こされていない
③ 5年以内に、相手方と直接、電話などで話をしていない
★なぜ「電話してはいけない」のか
ご訪問メモには、「至急連絡をください」「必ずお電話をください」と記載されていますが、電話をすること自体に法的義務はありません。それどころか、電話をしてしまうことで、消滅時効を主張できなくなるリスクが生じます。
電話口で、「分割なら支払える」、「少し待ってほしい」、「今はお金がない」といった発言をしてしまうと、「債務を認めた(承認した)」と評価される可能性があります。
民法152条では、債務の承認があった場合、時効は更新されると定められています。つまり、時効が完成していたとしても、電話一本でリセットされてしまう危険があるのです。
★訪問やメモ投函=時効が止まるわけではありません
トラスト弁護士法人は、実際に自宅訪問を行うことのある弁護士事務所ですが、訪問そのものや、ご訪問メモの投函は、時効の完成猶予・更新事由には該当しません。
民法147条が定める「時効の完成猶予・更新」が認められるのは、
・裁判上の請求
・支払督促
・強制執行
など、裁判所を通じた正式な手続きが取られた場合に限られます。
そのため、
「弁護士が来た」
「メモが入っていた」
という事実だけで、時効が止まることはありません。
トラスト弁護士法人による訪問があった場合には、次の点に注意が必要です。
・その場で話をしない
・メモに記載されている連絡先に電話をしない
・支払いに関する意思表示をしない
・内容を十分確認せずに応じない
訪問やメモは、あくまで「連絡を取るための手段」にすぎません。
最も重要なのは、自分から時効を壊す行動を取らないことです。
解決
取引履歴や裁判履歴の有無を確認した結果、時効の完成を妨げる事実は認められませんでした。そこで、内容証明郵便をもって、トラスト弁護士法人およびれいわクレジット管理株式会社に対し、消滅時効を正式に援用しました。その結果、支払義務が消滅したことを確認し、今後の連絡や訪問は行わない旨の回答を得て、無事解決に至りました。
弁護士法人から突然訪問を受け、「必ず電話を」と書かれたメモを見た場合でも、まずは電話をせず、消滅時効が成立している可能性を冷静に検討することが重要です。
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事務所概要
アルスタ司法書士事務所
お電話 0120-697-096
オフィシャル:https://alsta.jp/
お問い合わせ
執筆者:司法書士 大塚勇輝
アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属
1985年生まれ。父親の転勤により沖縄で生を受けるも、育ちはほぼ大阪一筋40年。 何故か小さい頃から周辺に法律問題が多く、公務員である父親への反発もあってか、大学卒業後もサラリーマンの道を選ばず司法の世界へ。 2010年司法書士試験合格。自称「個人の顧問法律専門家」。登記・成年後見業務に限らず、相続問題や借金問題など相談者の様々なニーズに応えることに注力している。