ギルドから訴訟を起こされたら

こんな相談がありました

 京都府にお住まいの60代男性より、大阪簡易裁判所から<訴状と呼出状>が届いたけれど、期日に裁判所に行ったら良いのか?、先ずは裁判所に連絡した方が良いのか?など、非常に慌てた様子で相談をいただきました。

原告(訴えた側)の会社についてお伺いしたところ、【株式会社ギルド】が裁判を起こしてきたとのことでした。

確かに、ギルドは現在は貸付を行っていませんが、今回の相談のように、過去に貸し出していた古い債権についても、積極的に裁判を起こしたり強制執行が行われる傾向にあります。

これまで届いていた書面などは、今更払えるような金額ではなかったため放っていたところ、ギルドの予告通り裁判所から書類が届いたので、流石にこれは放っておくわけにはいくまいと思い、急ぎ相談に来られたようです。

より良い解決方法を考えましょう

強制執行(給料や銀行口座の差押え)を恐れて、いきなりギルドに連絡しようものなら、払わずに解決できる可能性があったとしても、その権利を失いかねません。

また、何とかならないものかと裁判所に連絡をしたとて、裁判所は中立の立場にあるため、有用なアドバイスが貰えるものではありません。(恐らく、弁護士・司法書士に相談なさい、と言われるくらいのものでしょう。)

では、裁判所から書類が届いた時は、何から始めるべきか。
言わずもがな、請求内容とその具体的な事実について確認すべきです。

どのような請求を受けているかについては、訴状の記載のうち「請求の趣旨」と「請求の原因」という部分を見る必要があります。

「請求の趣旨」には裁判所に判決を求める結論の部分が記載され、その後の「請求の原因」には結論に結び付く法律関係や事実(経過)が記載されています。

請求の趣旨

1、被告は原告に対し、次の金員を支払え。
  金 3594958円(請求の原因2の残額)
  上記金額の内金478170円(請求の原因2の残元金)
  に対する令和7年〇月〇日から完済まで利息制限法所定の年26.280%の割合による遅延損害金。

2、 訴訟費用は被告の負担とする。
  との判決並びに、仮執行の宣言を求める。

以上から、今回ギルドが、残元金47万円と、既に発生している利息・損害金312万円、更に、令和7年〇月〇日から支払済(完済)するまで、年26.280%の損害金を付けて返済してくれ、という請求をしてきていることが分かります。

裁判を起こした段階で既に400万円近い金額に膨れ上がっているということですから、払える金額ではないと諦めて放ってしまう気持ちも分からないでもありません。かと言って、放っておいても、時間の経過とともに勝手に解決するものでもなければ、支払い義務がなくなるものでもありません。

加えて、このギルドという会社は、裁判手続きのみならず、強制執行についても積極的に行う傾向にあります。(不動産や勤務先の給料以外にも、自宅内の動産物をも対象として手続きを執ることも少なくありません。)

こうした動きからか、ギルドは基本的に裁判上でも裁判外でも和解に応じないことが殆どです。したがって、ギルドから請求を受けている場合は、一括して払うか、もしくは払わないかの選択しかできないことの方が多いということになります。
※ここ最近は減額和解提案(一括なら7割~8割程度減額)の書面が送付されてくることもあるようです

請求の原因

1 (1)契約の日 平成12年7月〇日
  (2)契約の内容 

①被告(訴えられた側)は、原告(ハッピークレジット(株)。別紙のとおり吸収合併及び、商号変更がなされている。)から限度額の範囲内で繰り返し金銭の借入れができる。
②限度額 金500000円
③利息 年率 年29.200%
遅延損害金 年率 年29.200%
④分割金の返済日 毎月15日
⑤特約 分割金の支払期日までに利息、または元金の支払いを怠った場合は当然に期限の利益を失い、残元金に損害   金を合わせて一時に支払う。

2 貸付金の合計額 599000円
  利息・損害金の合計額 3166958円 令和7年11月4日迄
  支払済みの額 171000円 
  最後に支払った日 平成13年1月15日
  残額 3594958円(内訳)元金478170円 損害金等3116788円

3 裁判手続きにおける合意管轄裁判所は、債権者(原告)の本社所在地又は営業店所在地を管轄する裁判所とす る。

4 被告は、平成12年10月16日の支払を怠り、同日の経過により期限の利益を失った。よって、原告は被告に対し、利息制限法所定の利率に引き直した前記請求の趣旨記載の金員の支払を求める。 以上

次に請求の原因ですが、先ほど述べたとおり、ここには法律関係や裁判に至る事実(経過)が記載されています。具体的には、平成12年7月にギルド(旧ハッピークレジット)と契約をした後、借入・返済を行うようになり、平成12年10月16日の支払を怠ったため、期限の利益を喪失したと記載があります。

ここからは、平成12年10月16日に予定されていた支払いをしなかったため、期限の利益を喪失し、借入額を全額一括して返済しなければならなくなったということが分かります。

その後平成13年1月15日まで支払っていたようですが、以降、今回のように過去に裁判を起こされたことがなく、相手方と電話や対面で直接のやり取りをしたことがないようであれば、<消滅時効を援用>することで、400万円もの支払いをせずとも解決を図ることができることになります。

重要なポイント

消滅時効とは、過去10年内に裁判等がなく、且つ、5年以上支払もなく、相手方と直接の連絡を取っていない場合に、その権利義務を消滅させる法律効果を指します。

【 消滅時効 】
① 5年以上支払がない
② 過去に裁判(訴訟・支払督促)を起こされていない
③ 5年以内に相手方と直接、電話などで話をしていない

なお、消滅時効の計算がどこからスタートするかについては、必ずしも最終の支払日というわけではなく、最終の支払日または、本来支払をすべき日の翌日(期限の利益を喪失した日)のいずれか遅い方であるということに注意しなければなりません。

改めて、今回の裁判において、事実は以下のとおりでした。

・期限の利益の喪失日 平成12年10月16日
・最終支払日 平成13年1月15日

したがって、相談者は最終の支払日または、本来支払をすべき日の翌日(期限の利益を喪失した日)のいずれか遅い方である平成13年1月15日から数えて5年以上返済をしていなければ期間としての時効の要件は満たしているということになります。

また、今回のように過去に裁判所から書類が届いたこともなく、相手方と直接連絡を取ったような事実もないという申告でしたので、消滅時効の要件を全て満たしている可能性が非常に高いと言うことができます。

先ほどお伝えしましたとおり、時間の経過とともに勝手に解決するものでもなければ、支払い義務がなくなるものでもありません。なお、本当に消滅時効の要件を満たしていたとしても、こちらから積極的に主張しなければ、裁判所や原告が勝手に時効として処理してくれるようなことはありません。

万が一、対応が遅れ、請求の趣旨に記載された内容の判決が確定しまってからでは、後から消滅時効を援用することはできません。

さらに一度裁判が確定してしまうと、時効はリセットされてしまい、その後少なくとも10年間は時効にかかることはなく、給料や銀行口座の差押えのリスクを抱えることになってしまいます。

解決

当事務所が代理人として、裁判所に対して期限内に答弁書を提出し、その中で消滅時効を援用しました。すると、ギルドは時効をリセットさせるだけの措置を講じていなかったため、口頭弁論期日に出頭することなく、今回裁判は取下げられ、無事解決に至りました。

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    執筆者:司法書士 大塚勇輝
    アルスタ司法書士事務所 共同代表/大阪司法書士会所属


    1985年生まれ。父親の転勤により沖縄で生を受けるも、育ちはほぼ大阪一筋40年。 何故か小さい頃から周辺に法律問題が多く、公務員である父親への反発もあってか、大学卒業後もサラリーマンの道を選ばず司法の世界へ。 2010年司法書士試験合格。自称「個人の顧問法律専門家」。登記・成年後見業務に限らず、相続問題や借金問題など相談者の様々なニーズに応えることに注力している。

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