ITO総合法律事務所から通告書が届いたら

こんな相談がありました


関西圏にお住まいの方から、【弁護士法人ITO総合法律事務所(担当:弁護士 伊藤真悟)】から<通告書>が届いたとの相談がありました。

書面を確認しますと、債権者(債権譲受人)【セゾン債権回収株式会社】、前債権者(債権譲渡人)【りそなカード株式会社】)、未払金の合計が67万円(うち元金額が50万円)と明記されており、文章には『訴訟による法的解決を図らざるを得ない』旨が記載されています。

相談者によれば、以前から書面は届いていたようですが、覚えがないと思い放っておいたところ、毎月のようにITO総合法律事務所から書面が届くため、家族もいる手前、裁判を起こされては困ると思い、今回ご相談に来られたようです。

このITO総合法律事務所は東京都渋谷区にオフィスを構える実在する弁護士事務所です。法人としての設立自体は令和4年なので比較的新しい事務所と言えますが、サービサーからの債権回収の委託を受けるだけの実績があるため、甘く見てはいけません。

詐欺ではないか?とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、適法な債権の請求をしてきているものなので、決して見て見ぬふりをしてしまわぬようご注意ください。

より良い解決方法を考えましょう


要約すると、届いた通告書には次の内容が記載されています。

・再三請求をしているが、支払いがされていない旨
・支払いがないので、法的解決を図らざるを得ないと考えている旨
・期限までに支払いも連絡もない場合は、訴訟を提起し、判決後、財産(預貯金、不動産、給与、自動車等)に対する強制執行に着手する旨
・事情があれば、訴訟前の協議には応じる旨

着目すべきは、「支払いがないので、法的解決を図らざるを得ない」という点ですが、これから裁判を起こすと捉えることが出来るため、現時点では未だ裁判は起こされていないことが窺えます。

通告書からはこれ以上の情報が得られないため、相談者にりそなカードまたはりそな銀行等との取引について、記憶をたどってもらったところ、少なくとも10年は支払いや連絡もしていないとのことでした。

ITO総合法律事務所が委託を受けて債権回収を行っている債権は、非常に様々であるため、そのすべてに当てはまるわけではありませんが、今回の相談内容については消滅時効を援用することで解決を図ることができそうです。

重要なポイント


消滅時効とは、一定期間権利行使がない場合に、債務者の主張によって支払義務が消えるという民法に定められた法律の規定です。

【消滅時効の要件】
① 最後の支払いから5年以上経過している
② 過去に裁判(訴訟・支払督促)が起こされていない
③ 5年以内に債務承認(電話・一部支払・分割相談)がない

今回の相談では10年以上「支払なし」「裁判歴なし」「相手方と話した記憶なし」とのことでしたので、消滅時効の要件を満たしている可能性が高いということが言えるわけです。

★時効期間の計算方法

なお、期限の利益を喪失した日の翌日から時効の計算はスタートすることになりますが、この期限の利益の喪失日がいつか、という点については契約内容や取引内容によることになります。

但し、一般的に銀行や消費者金融等からの借入については、「支払いを怠った時」とされているケースが多いことから、「最終支払日または最終支払予定日の翌日」から進行すると捉えていただければ差し支えないと思います。

例①(既に期限の利益を喪失している場合、)
2014年5月10日が最後の支払い → 2019年5月10日の経過をもって時効完成

例②:(契約通りの支払いが続いていた場合、)
2014年5月10日が最後の支払い(2014年6月10日が契約上の支払い予定日)
→ 2019年6月10日の経過をもって時効完成

時効が完成した後でも、請求する権利自体が突然奪われるわけではないため、その主張を受けるまでは当然請求が届くことがあります。その結果、時効を中断・更新させるような事実が発生してしまうと、完成していた時効はリセットされ、捉え方によっては支払義務が復活するような形になってしまいます。

また、その後になって、「あれは時効だった」などと、これを蒸し返すことはできないため、この点はよく理解をしておく必要があります。

つまり、消滅時効は援用することで初めて支払義務が消滅するのであって、請求・督促を受けることがなくなるのは、その後の話、ということでしかありません。

★債権回収会社に譲渡された債権と信用情報

ところで、今回の書面には「前債権者:りそなカード株式会社」「債権者:セゾン債権回収株式会社」と記載されています。

ここで覚えておくべきは以下の点です。

・債権譲渡されても信用情報(ブラック)は延長されない
・サービサーは新たな事故情報を登録できない(そもそもサービサーは信用情報機関に加盟していない)
・延滞情報は最大5年で削除される

要は、債権回収会社に移ったことが信用情報に不利に働くことはない、ということです。ですが、信用情報に記載がないからと言って支払い義務がない、もしくは取り合う必要がないという話ではなく、信用情報上の記載と未払債務は必ずしも連動しないということを忘れてはいけません。
この点は分かりやすい例で言えば友人にお金を借りた場合、返さないといけませんが信用情報には記載されません。
これと同じようなものだとお考え下さい。

解決

ITO総合法律事務所に連絡の上、債権調査票(債権の詳細についての届出)の提出を依頼したところ、依頼元であるセゾン債権回収からこれが届き、更に詳細について電話等で確認をとったところ、最終支払日から10年以上経過しており、過去に裁判手続きなどを執っていないことことが判明しました。


そこで、内容証明郵便をもってセゾン債権回収株式会社へ「消滅時効の援用」を通知した結果、請求を受けていた元金・利息・損害金のいずれの支払い義務も消滅し、今後の請求・督促も行わないことをセゾン債権回収に確認し、業務が終了しました。


ITO総合法律事務所は様々な様式、内容で催告書、通告書、最後通告書を送ってきます。場合によってはショートメールなどが送られてくるケースもあるようです。また、届く書面のほとんどが請求金額や支払期日以外について情報のないものです。こうしたことから、詳細を確認するために連絡をしてしまうような方もいらっしゃるかと思います。

ですが、よくよく考えてみてください。回収に向けて様々な準備をしている弁護士に対して、丸腰で連絡をしてしまうことは、リスクの高い行為以外の何者でもありません。法律には後になって蒸し返すことのできないことがたくさんありません。どういった解決方法があるかは別にしても、弁護士から書面が届いた時は、安易に連絡をしてしまわず、先ずは弁護士・司法書士に相談なさることをお勧めします。

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