
しんわから訴状が届いたら
こんな相談がありました
大阪府にお住まいの60代男性から、【福岡簡易裁判所】から<訴状と期日呼出状>が届いたが、遠方の裁判所なのでどうしたら良いかと相談をいただきました。
原告(訴えた側)の会社をお伺いしたところ、【株式会社しんわ】ということでした。
過去に付き合いはあったもの、10年以上前に完済したはずなので、これまで届いていた書面などは、何かの間違いだろうといずれも無視をしていたところ、裁判所から書類が届いたことから、流石に放っておくわけにはいかないと思い、急ぎ相談に来られたようです。
より良い解決方法を考えましょう
大前提として、裁判所から届いた書面を無視してはいけません。
裁判手続きはいずれも当事者に書面が送達(受け取った)された時点で自動的に進んでいくことになります。したがって、何も対応しなければ、裁判所も何らの主張もないものとして、いわゆる欠席裁判にて原告の主張が丸々全て認められてしまうことになります。
※裁判手続きに関する書類の送達について
裁判手続きに関する書類の送達(受け取り)は必ずしも、当事者本人である必要はありません。同居の親族、家族が代わりに受け取ることも認められ、このほか勤務先へ送達される可能性もあります。また、居住実態があるにも関わらず受取りがなされないなどの事情がある場合は、書留郵送の発送をもって送達されたこととなる特別なルールもあるため、裁判手続きの状況判断は案外簡単なものではありません。
裁判(判決)が確定してしまうと、主張できたものがあったとしても、後から蒸し返して裁判のやり直しや、判決の内容に異議を唱えることは原則できません。
また、確定判決は強制執行の権利を相手方に与えてしまうこととなるため、給料や口座の差押えのリスクを負うこととなります。
前置きが長くなりましたが、では、どういった解決方法が考えられるでしょうか。
先ず、どのような請求を受けているかについては、訴状の記載のうち請求の趣旨及び請求の原因という部分を見る必要があります。
請求の趣旨には裁判所に判決を求める結論の部分が記載され、請求の原因には結論に結び付く法律関係や事実(経過)が記載されています。
請求の趣旨
被告は、原告に対し金115万円及び、内金18万円に対する令和7年x月x日から支払済まで年26.280%の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
仮執行宣言
との判決を求める。
以上から、しんわが、残元金18万円と、既に発生している利息・損害金115万円、更に、令和7年x月x日から支払済(完済)するまで、年26.280%の損害金を付けて返済してくれ、という請求をしてきていることが分かります。
裁判を起こした段階で既に100万円を超える膨れ上がっているということですから、一般的に考えて、直ぐに払ってしまえるような金額ではありません。
なお、訴状に明確には記載されているわけではありませんが、もし、裁判所がこの請求の趣旨記載のとおりの判決を出した場合は、一括で支払わなければなりません。(総額に満たない支払いをしたとしても、残りの部分について、強制執行(差押え)の対象となる恐れがあります。)
次に、請求の原因ですが、先ほど述べたとおり、ここには法律関係や裁判に至る事実(経過)が記載されています。具体的には、平成14年5月にしんわと契約をした後、借入・返済を行うようになり、平成15年3月の支払を怠ったため、期限の利益を喪失したと記載があります。
請求の原因
1 原告は、貸金業法第3条所定の貸金業の登録を受け、肩書所在地で商号「株式会社しんわ」の名称で貸金業を営んでいるものである。
2 原告は、被告と借入限度基本契約書を取り交わし契約を締結し、次の事項を約定した。
①契約日 平成14年5月00日
②融資限度額 金50万
③利息 年率29.200%
④遅延損害金 年利率29.200%
⑤支払日 毎月3日
⑥支払方法 残高スライドリボルビング方式
⑦契約期間 契約締結日から3年間、但し当事者から申出がなければ更に3年間自動継続。
⑧期限の利益の喪失 本契約の約定に基づく返済を1回でも怠ったとき
⑨合意管轄 本契約に関する訴訟または調停の必要が生じた場合には、訴額のいかんに拘わらず貸主の本社もしくは貸主の取引に係る支店の所在地を管轄する簡易裁判所及び地方裁判所とすることに合意します。
3 原告は、前述の第2項の借入限度基本契約に基づき、被告に対し、別紙計算書のとおり、平成14年5月x日に、金200,000円を貸し付け、以降、別紙計算書の通りの金員を貸し付けた。
4 被告は、別紙計算書のとおり弁済した。(同計算書は、利息制限法に基づき、引き直し計算したものである。)
5 被告は、平成15年3月x日に支払うべき金員の支払いを怠った為、第2項⑧により同日の経過をもって期限の利益を喪失した。
6 よって、原告は被告に対し、金1,150,000円及び、内金180,000円に対する令和7年x月x日から支払済まで年26.280%の割合による金員の支払いを求める。
期限の利益とは、支払いの期日までは支払いをしなくて良いという借りた側の権利を指します。平成15年3月に予定されていた支払いをしなかったため、期限の利益を喪失し、請求額を一括して全額返済しなければならなくなったのだと理解してください。
ただ、その後も支払がなく、今回のように過去に裁判を起こされたことがなく、相手方と電話や対面で直接のやり取りをしたことがないようであれば、<消滅時効を援用>することで、115万円もの支払いをせずとも解決を図ることができる可能性があります。
重要なポイント
消滅時効とは、過去10年内に裁判等がなく、且つ、5年以上支払もなく、相手方と直接の連絡を取っていない場合に、その権利義務を消滅させる法律効果を指します。
【 消滅時効 】
① 5年以上支払がない
② 過去に裁判(訴訟・支払督促)を起こされていない
③ 5年以内に相手方と直接、電話などで話をしていない
先ず、消滅時効の計算はどこからスタートするのかですが、これは必ずしても最終の支払日というわけではなく、最終の支払日または、本来支払をすべき日の翌日(期限の利益を喪失した日)のいずれか遅い方であるということに注意しなければなりません。先ほど説明したとおり、今回の相談における期限の利益の喪失日は平成15年3月でした。
最終支払日を確認するにあたっては、請求の原因4に<被告は、別紙計算書のとおり弁済した。>と記載があるので、この「別紙計算書」を確認したところ、最後の返済は平成15年2月x日となっていました。
以上から、相談者は最終の支払日または、本来支払をすべき日の翌日(期限の利益を喪失した日)のいずれか遅い方である平成15年3月x日から数えて5年以上返済をしていないことが訴状からも明らかであり、また、今回のように過去に裁判所から書類が届いたこともなく、相手方と直接連絡を取ったような事実もないという申告だったので、今回の請求は、消滅時効の要件を満たしている可能性が非常に高いという判断ができます。
但し、本当に消滅時効の要件を満たしていたとしても、こちらから積極的に主張しなければ、裁判所や原告が勝手に時効として処理してくれるようなことはありません。
また、届いた訴状に対する反論は、裁判の期日の1週間前までに“答弁書”として提出する必要があります。電話で裁判所や相手方に直接この主張を行うほか、相手方に直接書面で通知をしたとしても、裁判手続きには何ら影響を与えません。あくまで、裁判手続きにおける主張は裁判所へ提出する書面でするのが原則だとお考えください。
解決
当事務所が代理人として、裁判所へ期限内に答弁書を提出し、その中で消滅時効を援用しました。すると、しんわは時効を中断・更新させるだけの措置を講じていなかったため、裁判期日に出頭することなく、今回裁判は取下げられ、無事解決に至りました。
差押え予告の通知や、実際に裁判所から債権差押命令が届いてから相談に来られるケースも少なくありません。どうせ時効だろうと胡坐をかいているととんでもない結果になる可能性も潜んでいます。借金問題に限った話ではありませんが、解決すべき問題は先延ばしにせず、解決できるうちに早々に解決しておかれるべきだと言わざるを得ません。そういった意味では、裁判を待たずして、時効の要件を満たしているのであれば、積極的に消滅時効を援用しておくのも一つの選択肢として前向きにご検討いただいて良いのかと思います。
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